梅雨の晴れ間は、驚くほど唐突にやってくる。
今朝、カーテンを開けると、昨日までのどんよりとした雲が嘘のように去り、透き通るような青空が広がっていた。絶好の洗濯日和だ。僕は迷わず、溜まっていた洗濯物をまとめて洗濯機に放り込んだ。
スイッチを入れてしばらくすると、規則正しい駆動音が狭い洗面所に響き渡る。
その中には、僕のシンプルな白やネイビーのシャツに混ざって、少し小ぶりなパステルカラーの靴下や、柔らかな素材のカットソーがいくつか混ざっている。週末、彼女が部屋に泊まっていったときに「洗っておいてね」と置いていったものだ。
脱水が終わったカゴを抱えて、ベランダへ出る。
まだ少し湿った空気の中に、いつもの洗剤の匂いがふわりと広がった。 ハンガーに自分のシャツを掛け、その隣に、彼女の衣服を並べていく。僕の大きな服の影に隠れるように、小さな服が風に揺れている。
一人暮らしをしていた頃の僕にとって、洗濯はただの「効率的なタスク」でしかなかった。いかに早く回し、いかに効率よく乾かすか。そこに感情の余白なんてものは存在しなかった。
けれど、こうして二つの異なるサイズ、異なる色彩の洗濯物が物干し竿に並んでいるのを眺めていると、なんとも言えない静かな満たされ感が胸の奥に広がっていく。
言葉にして何かを約束しているわけではない。 お互いの生活の拠点はそれぞれにあり、平日はそれぞれの場所で、淡々と自分の時間を過ごしている。けれど、こうして僕の日常の風景の中に、彼女の生活の一部がごく自然に、境界線もなく溶け込んでいる。
その明確にしない緩やかさが、僕たちにとっての一番心地よい距離感なのだと思う。
夕方、仕事から帰宅してすぐにベランダへ向かう。 太陽の光をいっぱいに吸い込んだ洗濯物たちは、からりと乾いて、どこか誇らしげに揺れていた。
一つずつ丁寧に取り込み、腕の中に抱きかかえる。お日様の匂いと、微かに残る柔軟剤の香りが混ざり合って、胸の奥がじんわりと温かくなった。
自分の服を畳み、彼女の服は、クローゼットの彼女専用の小さなカゴへとそっと収める。
ただ洗濯物を取り込んだだけのアクション。 けれど、部屋の中に漂うその微かな気配だけで、一日の仕事の疲れが綺麗に引き算されていくのが分かった。
いつもの静かな一人の夜。キャンドルに火を灯し、淹れたての白湯を飲みながら、週末にまたこの服を身に纏って現れる彼女の姿を、少しだけ思い浮かべている。
